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鬼ごっ子

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誰も見てない涙【前編】

高山くんVS蒼兄さんが書きたかったんです(言い訳)
続きます


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大きな背中は、とても大切でかけがえのない人のもの……

誰も見てない涙【前編】

++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ここで待っていたらいいのかな?」
 鬼太郎は手紙を片手に近くの切り株に腰かけた。その手紙にはここで待つよう書かれている。差出人は、この近くの村に住んでいるという少年。村を荒らす妖怪に困り、最後の頼みの綱として鬼太郎に手紙を出したそうだ。妖怪は決まって夜に現れるため姿形は一切分からず、しかし、食べ物を取っていくことしかしないらしい。そこまで凶暴な妖怪ではないと判断した鬼太郎は、砂かけばばあや子泣きじじいたちと一緒に旅行に出かけている目玉親父や、いつもそばにいるネコ娘にさえ知らせずに、この辺境の地にやってきた。
 暫く待っていると、つぎはぎだらけの服を着た少年がやって来た。少年は鬼太郎を見つけると、痩せて骨ばった頬を綻ばせ、雪の中を器用に駆け寄って来た。
「君が六助くんだね」
 鬼太郎がそう言うと少年は大きく頷いた。鬼太郎の手を握ってニヤリと笑う。冬の山に雪が静かに降り出した。

 迷子になった挙句、呼子を呼んで横町に連れてきてもらった蒼坊主は、横町のゲートをくぐった瞬間違和感を覚えた。いつも入り口で待っていてくれる彼の大切な弟、鬼太郎の姿がそこにはない。
「呼子……鬼太郎はどうした? 心なしか、横町もいつもより静かなような……?」
 呼子は俯いたまま小さな声でうん、と言った。砂かけばばあの長屋まで歩きながら、呼子は弱弱しい声で話した。
 鬼太郎がいなくなったこと。誰も鬼太郎の行き先を知らないこと。そして、もう三日も帰ってきてないこと。
 長屋に着いた蒼坊主は渋い顔をして、同じく渋い顔をした目玉親父に聞いた。
「最後に鬼太郎を見たのは?」
 その瞬間、その場にいた全員がネコ娘を見た。ネコ娘は目じりに涙を浮かべたまま、少しずつ話し出した。
「私が最後に見たのは……鬼太郎がいなくなった前の日。親父さんたちが旅行に行った次の日よ……いつもみたいに、ダラダラゴロゴロしてて、何も変わったとこなんてなかったのに……!」
 ネコ娘は顔を手で覆って、再び声を荒げて泣き出した。ろくろ首たちが背中をさすって落ち着かせようとする。蒼坊主の顔がますます渋いものになっていく。そのとき、いやらしい声が聞こえてきた。
「へへへ! お困りのようですなぁ。このオレ様が、チョー有力な情報ってやつを教えてやろうか?」
 自慢のひげをいじりながら、得意気な顔をしたねずみ男がやって来た。すかさずネコ娘が、その憎たらしい顔を引っ掻く。怒りに化け猫の顔になりながらも、その目には涙が溜まっている。ねずみ男は引っ掻かれた顔を擦りながらいってー! と大声で叫んだ。ネコ娘は文字通り毛を逆立てて牙を剥いた。
「この一大事に一体何しに来たのよ! フー!」
「何って……言ったじゃねぇかよ。超有力情報を持ってきてやったんだよ!」
「どういうことよ」
 ネコ娘を始めその場にいた全員が、如何わしいものを見る目でねずみ男を見た。ねずみ男はそんな視線に一切気付かず、得意気に話し始めた。
「鬼太郎を最後に見たのはオレだっちゅー情報よ。鬼太郎がいなくなった日の朝、オレ鬼太郎見たぜ。妖怪ポストあさってたらバレちまってよー……」
 再び、ネコ娘がねずみ男の顔に爪を立てた。バリッと引っ掻く音がして、ねずみ男の悲鳴が響き渡った。
「またそんなこと……」
「ねずみ男!」
 ネコ娘の声を遮ったのは蒼坊主だった。全員がキョトンとした顔で蒼坊主を見る。蒼坊主は深刻な表情でねずみ男を半ば睨んで言った。
「その妖怪ポストに、手紙は入っていたか?」
 その真意が分かってネコ娘たちはハッとした。唯一気付かなかったねずみ男はぼんやりと宙を見ながら考え、あった! と大きな声で答えた。蒼坊主が眉を寄せる。でもよー、とねずみ男が続けた。
「あて名は見てねぇぜ? すぐに見つかっちまってよー。どこに行ったかは、さすがのオレ様でも分かんねぇな」
 ねずみ男はゆっくりと背を向けた。そのとき、彼がどんな顔をしていたかは誰も知らない。
「大変だー! おやっさん、大変だよ!」
 大声で叫びつつ、手に持った秤から小豆をこぼしながら、小豆洗いがかけていた。目玉親父がなんじゃ? と聞く。小豆洗いは息を切らしながら、鬼太郎が帰って来た! と言った。さっきまで沈んだ顔をしていた全員の表情が明るくなる。ネコ娘が駆け出したのを、小豆洗いが止めた。
「ネコ娘! 行っちゃいけねぇ」
「なんでよ? 鬼太郎が、やっと鬼太郎が帰って来たのよ?」
 小豆洗いが珍しく真剣な顔をして、ネコ娘の後ろを睨んだ。その姿を見た蒼坊主の顔に驚きが広がる。
「アレを見れば分かるさ」
 ネコ娘がゆっくりと振り返り、絶句した。そこには、邪悪な妖気を纏いながら髪の毛剣を持ち、鋭い眼光を宿した目でネコ娘たちを睨んでいる鬼太郎の姿があった。
「やぁ。久しぶりだねぇ、蒼坊主。随分と探したよ」
 鬼太郎の口から発せられたのは、いつも温厚な鬼太郎からはとても想像できないほど低く、不気味な声だった。

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読書 妄想
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ここは、鬼太郎至上主義者である私―傘屋が管理する二次創作ブログです。
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